ART
蔡國強が表現する、現代社会の悲しみ。
July 29, 2015 | Art | casabrutus.com | photo_kamiyama yosuke movie_takuya neda text_Naoko Aono
ニューヨークのメトロポリタン美術館やグッゲンハイム美術館、ドーハのマトハフ・アラブ近代美術館など世界中の美術館で個展を開いてきた蔡國強。2008年北京オリンピック・パラリンピック開閉会式では視覚特効芸術監督を務めた。その彼が、若き日を過ごした日本で個展を開いている。日本の美術館では7年ぶりになる大型個展で彼が伝えたいものとは?
横浜美術館での個展に先だって蔡は、ボランティアや学生たちといっしょに、展示作品を制作している。その一部は報道陣に向けて公開された(下の動画)。会場に入るとまず目に飛び込む《夜桜》は、その時に制作されたものだ。巨大な和紙を床に置き、火薬をまいて段ボールを上から被せてレンガなどで抑え、爆発させる。今回のモチーフはタイトルの通り、桜だ。
「日本画を勉強していると横山大観を始め、多くの画家が桜を描いている。また北京オリンピックといった国家的プロジェクトに関わってきて、そろそろもっと身近でやさしい、柔らかいものを扱いたいという気持ちが強くなってきた」と蔡は言う。
《夜桜》の火薬絵画には火薬のほかに漢方薬などに使われる成分なども使用して、色をつけている。これまでは焦げ茶色一色だった画面がほんのりと黄色やピンクに染まっている。
「日本画を勉強していると横山大観を始め、多くの画家が桜を描いている。また北京オリンピックといった国家的プロジェクトに関わってきて、そろそろもっと身近でやさしい、柔らかいものを扱いたいという気持ちが強くなってきた」と蔡は言う。
《夜桜》の火薬絵画には火薬のほかに漢方薬などに使われる成分なども使用して、色をつけている。これまでは焦げ茶色一色だった画面がほんのりと黄色やピンクに染まっている。
《夜桜》の制作風景
《人生四季》は江戸時代中期〜後期の浮世絵師、月岡雪鼎(つきおかせってい)の春画「四季画巻」からインスピレーションを受けたもの。四点ある火薬絵画には、それぞれ季節の花や鳥が登場する。もとの絵では睦み合う男女も少しずつ、大人になっていく様子が描かれている。
「人間も自然の一部であって、自然とともに移り変わっていくという東洋的な考えの表れです。私は中国出身だけれど若いころ9年近く日本に住み、日本文化にも親しんでいる。私の中で日本文化は重要な位置を占めています」
今回、横浜で個展を開くにあたって蔡は横浜出身の思想家、岡倉天心についても調べた。
「80年代、中国にいたころから岡倉天心には興味を持っていました。彼は英語も堪能で、アメリカのボストン美術館の中国・日本美術部長も務めた人物です。彼はアジアの美術や哲学をとても大切にしていました。でも80年代の中国ではマルセル・デュシャンやアンディ・ウォーホル、ヨゼフ・ボイスら西洋の現代美術が憧れの的になっていた。私は100年前に岡倉天心が試みた、西洋化に対してアジア独自の美しさを打ち出すことが今も大切なのではないかと思うのです。さまざまに異なる文化を尊重しあうこと、いいものは互いに吸収すること、そういった多元文化的な考えが世界の平和につながる。宇宙でもブラックホール、ホワイトホール、超新星、老化して死んでいく星、さまざまな力がバランスをとっているから美しい」
「人間も自然の一部であって、自然とともに移り変わっていくという東洋的な考えの表れです。私は中国出身だけれど若いころ9年近く日本に住み、日本文化にも親しんでいる。私の中で日本文化は重要な位置を占めています」
今回、横浜で個展を開くにあたって蔡は横浜出身の思想家、岡倉天心についても調べた。
「80年代、中国にいたころから岡倉天心には興味を持っていました。彼は英語も堪能で、アメリカのボストン美術館の中国・日本美術部長も務めた人物です。彼はアジアの美術や哲学をとても大切にしていました。でも80年代の中国ではマルセル・デュシャンやアンディ・ウォーホル、ヨゼフ・ボイスら西洋の現代美術が憧れの的になっていた。私は100年前に岡倉天心が試みた、西洋化に対してアジア独自の美しさを打ち出すことが今も大切なのではないかと思うのです。さまざまに異なる文化を尊重しあうこと、いいものは互いに吸収すること、そういった多元文化的な考えが世界の平和につながる。宇宙でもブラックホール、ホワイトホール、超新星、老化して死んでいく星、さまざまな力がバランスをとっているから美しい」
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