青野尚子の「今週末見るべきアート」|杉本博司が考える人類の終末

約2年間の改修を終えてぴかぴかになった東京都写真美術館。リニューアル・オープンおめでとう! という気分で中に入ると、そこには思いがけない廃墟が広がる。美術館の総合開館20周年記念でもある杉本博司の個展は「文明の終焉」がテーマだ。彼が考える人類の終末とは何か、杉本に聞いた。

新品の美術館内に広がる廃墟は〈今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない〉の展示室で。トタン板はパリ郊外で入手したもの。「並のトタン板じゃない。パリーのトタン板なんです」と杉本はおどける。波のピッチなどが日本のものとは違う。

『杉本博司 ロスト・ヒューマン』と題された個展は〈今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない〉〈廃墟劇場〉〈仏の海〉の3部構成。最初の展示室に広がる〈今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない〉と題されたシリーズでは錆び付いたトタン板で囲われた、打ち捨てられたようなスペースに杉本自身の写真と、彼が見つけた歴史的文物がインスタレーションされている。戦時下の硫黄島の地図、歴代の政治家たちが表紙になった『TIME』誌、機械仕掛けの文楽人形、日本が世界に誇る高技術を結集したラブドールまでが等価に並ぶ。

「美術史学者」のコーナーには鎌倉時代の雷神像や當麻寺の天平時代の古材などが並ぶ。右奥の鳥かごは「ファラデーケージ」。時折、放電する。

タイトルはアルベール・カミュの『異邦人』の冒頭「今日、ママンが死んだ」からとったもの。不条理を表出したとされるこの小説より、もっと不条理なことが現実に起きつつあるように思えてくる。この展覧会は2014年にパリのパレ・ド・トーキョーで展示されたインスタレーションの東京バージョンである。