ART
レディー・ガガも虜(とりこ)に? キネティック・アートがキテます!
August 11, 2014 | Art | a wall newspaper | text: Mikado Koyanagi editor: Yuka Uchida
まるでマジック! 視覚を騙すキネティック・アートに、世界中のアートファンが興味津々です。
レディー・ガガの最新アルバム『アートポップ』のCDの盤面を覚えているだろうか? ジェフ・クーンズが作ったガガの彫刻の背後に放射状に広がる矢印のような模様。見つめると吸い込まれそうなこのアートワークは、日本の「錯視」研究の第一人者、北岡明佳の作品だ。この「錯視」を効果的に使った抽象画、つまり「オプ・アート(オプはオプティカルの略)」が、近ごろまた注目を集めている。
オプ・アートが流行した1960年代に、こうした目の錯覚や、観る人の視点の移動によって、動かないはずの絵が動いているように見えたり、実際に、モーターなどを使って作品の中に「動き」を作り出したりした作品が、現代美術の一つのトレンドとなったが、そのような作品の総称が「キネティック・アート」なのだ。
そのキネティック・アートの展覧会が、折しもこの7月から東京で開催されることになった。そこで、展覧会を監修した〈ふくやま美術館〉の谷藤史彦氏に話をうかがってみた。
「今なぜキネティック・アートなのかというと、昨年、パリのグラン・パレで光と動きをテーマにした企画展『ダイナモ』展が開催されるなど、海外でもこうしたアートが注目され始めているんです。また、美術館で大人も子供も観て楽しめる作品をと考えたときに、キネティック・アートは格好の対象となりますよね。そうした需要もあるのだと思います」
オプ・アートが流行した1960年代に、こうした目の錯覚や、観る人の視点の移動によって、動かないはずの絵が動いているように見えたり、実際に、モーターなどを使って作品の中に「動き」を作り出したりした作品が、現代美術の一つのトレンドとなったが、そのような作品の総称が「キネティック・アート」なのだ。
そのキネティック・アートの展覧会が、折しもこの7月から東京で開催されることになった。そこで、展覧会を監修した〈ふくやま美術館〉の谷藤史彦氏に話をうかがってみた。
「今なぜキネティック・アートなのかというと、昨年、パリのグラン・パレで光と動きをテーマにした企画展『ダイナモ』展が開催されるなど、海外でもこうしたアートが注目され始めているんです。また、美術館で大人も子供も観て楽しめる作品をと考えたときに、キネティック・アートは格好の対象となりますよね。そうした需要もあるのだと思います」
デ・ヴェッキ
《軸測投影法の歪み_1》
〈グルッポT〉のメンバーでもあったガブリエレ・デ・ヴェッキの1964年の作品。三角柱の形に組んだ金属棒を固定した円形板をモーターで回転させ、そこに光を当てることによってできる影と金属棒の織りなす形の変化が楽しめる。
《軸測投影法の歪み_1》
〈グルッポT〉のメンバーでもあったガブリエレ・デ・ヴェッキの1964年の作品。三角柱の形に組んだ金属棒を固定した円形板をモーターで回転させ、そこに光を当てることによってできる影と金属棒の織りなす形の変化が楽しめる。
アンチェスキ
《水平流体の走行》
ジョヴァンニ・アンチェスキの1962年の作品。直方体の空洞内に30本以上の透明なチューブを水平に張り巡らせ、そこに色のついた液体と空気を交互に流し、その動きを背後からネオン管によって照らし視覚化したもの。
《水平流体の走行》
ジョヴァンニ・アンチェスキの1962年の作品。直方体の空洞内に30本以上の透明なチューブを水平に張り巡らせ、そこに色のついた液体と空気を交互に流し、その動きを背後からネオン管によって照らし視覚化したもの。
縞模様の棒が動くと…
アンチェスキ
《円筒の仮想構造》
同じくアンチェスキの1963年の作品。垂直に立てられた18本のストライプ柄の金属棒を2本ずつ対にして回転させることで、9つの円柱が立ち現れるよう狙ったもの。アンチェスキもまた、〈グルッポT〉の一員だった。
アンチェスキ
《円筒の仮想構造》
同じくアンチェスキの1963年の作品。垂直に立てられた18本のストライプ柄の金属棒を2本ずつ対にして回転させることで、9つの円柱が立ち現れるよう狙ったもの。アンチェスキもまた、〈グルッポT〉の一員だった。
今回の展覧会はイタリアの作品が中心なのだが、なぜイタリアなのかという問いに対して。
「イタリアには、戦前の〝未来派〟の流れがまずありますが、直接的には、ルチオ・フォンタナやブルーノ・ムナーリの影響のもと、1960年代にキネティック・アートが盛んになります。この運動の母体となったのがブレラ美術学校。ここでは、現代アートを中心に、デザインや新しいメディアなどを複合的に学べる土壌がありました。そこから巣立っていった人たちが、当時の科学・工業技術を取り入れ、キネティック・アートを作り出していったのです」
最後に、展覧会の見どころをお聞きしてみた。
「やはり、実際に観て初めて作品の面白さがわかるものばかりですから、きっと展覧会に行く醍醐味を味わっていただけると思います」
カーサ読者にも馴染み深い、ブルーノ・ムナーリやエンツォ・マーリのアート作品も観られるこの展覧会をぜひその目で「体験」していただきたい。
「イタリアには、戦前の〝未来派〟の流れがまずありますが、直接的には、ルチオ・フォンタナやブルーノ・ムナーリの影響のもと、1960年代にキネティック・アートが盛んになります。この運動の母体となったのがブレラ美術学校。ここでは、現代アートを中心に、デザインや新しいメディアなどを複合的に学べる土壌がありました。そこから巣立っていった人たちが、当時の科学・工業技術を取り入れ、キネティック・アートを作り出していったのです」
最後に、展覧会の見どころをお聞きしてみた。
「やはり、実際に観て初めて作品の面白さがわかるものばかりですから、きっと展覧会に行く醍醐味を味わっていただけると思います」
カーサ読者にも馴染み深い、ブルーノ・ムナーリやエンツォ・マーリのアート作品も観られるこの展覧会をぜひその目で「体験」していただきたい。
4つの半球が飛び出してくる!
ダダマイーノ
《ダイナミックな視覚のオブジェ》
ミラノで活躍した女性アーティスト、ダダマイーノの1962年のオプ・アート的作品。鏡面状のアルミニウム板にアクリル絵の具で描かれた大小の白い四角形の巧みな配置によって、4つの半球がこちらに飛び出してくるように見える。
ダダマイーノ
《ダイナミックな視覚のオブジェ》
ミラノで活躍した女性アーティスト、ダダマイーノの1962年のオプ・アート的作品。鏡面状のアルミニウム板にアクリル絵の具で描かれた大小の白い四角形の巧みな配置によって、4つの半球がこちらに飛び出してくるように見える。
マーリ
《構造 866》
本誌でもお馴染み、エンツォ・マーリの1967年の作品。奥行きのある黒のアルミニウムのグリッドに、白、赤、黄で着色された金属板を何段階かの奥行きに合わせてはめ込んだもの。色彩のグラデーションとそれが奏でるリズムが楽しい。
《構造 866》
本誌でもお馴染み、エンツォ・マーリの1967年の作品。奥行きのある黒のアルミニウムのグリッドに、白、赤、黄で着色された金属板を何段階かの奥行きに合わせてはめ込んだもの。色彩のグラデーションとそれが奏でるリズムが楽しい。
デマルコ
《変化するプリズムと反射光》
アルゼンチンに生まれ、後にフランスで活躍したユーゴ・デマルコの1964年の作品。金属板で仕切られた空間の中に交互に張られた黒と白の円盤が、仕切り板に反射しながら他の円盤と融合し、独特な視覚的リズムを作り上げていく。
《変化するプリズムと反射光》
アルゼンチンに生まれ、後にフランスで活躍したユーゴ・デマルコの1964年の作品。金属板で仕切られた空間の中に交互に張られた黒と白の円盤が、仕切り板に反射しながら他の円盤と融合し、独特な視覚的リズムを作り上げていく。
当時の科学・工業技術を積極的に取り入れた〈キネティック・アート〉は、自ずとその作品の制作に複数の人間が携わることが求められ、その推進役として多くのグループが誕生した。今回の展覧会でも、イタリアの〈グルッポT〉〈グルッポN〉〈グルッポMID〉などの作品を観ることができる。写真は〈グルッポT〉のメンバーたち。
写真提供:Centro Culturale Arte Contemporanea Italia-Giappone (ACIG), Parma
『不思議な動き キネティック・アート展』
●〈損保ジャパン東郷青児美術館〉
東京都新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42F TEL 03 5777 8600(ハローダイヤル)。〜8月24日。10時〜18時(17時30分最終入館)。月曜休(祝日は開館)。観覧料1,000円。