青野尚子の「今週末見るべきアート」|越境するアートが生み出す、新しいコミュニケーション。

3月に北陸新幹線が開通して東京との距離が縮まった金沢。昨年、開館10周年を迎えた金沢21世紀美術館では3か年かけて建築、現代美術、工芸の3つのテーマで大規模な展覧会を開いています。昨年の建築に続き、今年は現代美術をフィーチャー、「ザ・コンテンポラリー」と題したシリーズが展開中です。

アルフレド&イザベル・アキリザン「通路:プロジェクト‐もうひとつの国」2014年 Collection of 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa ©Alfredo & Isabel Aquilizan

4月からの「ザ・コンテンポラリー1 われらの時代:ポスト工業化社会の美術」に続いて9月から始まった「ザ・コンテンポラリー2」には「誰が世界を翻訳するのか」というタイトルがついている。「移動」や「横断」がキーワードになる展覧会だ。

参加作家の中には実際に越境を体験した人も少なくない。アルフレド&イザベル・アキリザンはともにフィリピンの出身だが2006年にオーストラリアに移住、今はブリスベンを拠点にしている。彼らの作品は逆さになったボートに、段ボールで作った家がぎっしりと取り付いているオブジェだ。

「インドネシアやフィリピン付近の海上では、かつては自由に行き来ができたけれど1960年代に、海上に国境線が引かれてしまった。そこで海を流浪していた人々は陸に上がって、高床式の家に定住するようになった。そんなことがこの作品の背景になっている。ボートをひっくり返すと屋根のようになるのも面白い。段ボールを使っているのは、それが移動に関係するものだから」

水や船が象徴するものはさまざまだけれど、異文化の間でも共通するものもある。

「水は生命に関するものを象徴することが多いけれど、船に関しては国によって受け止め方が違う。小さな島が集まったフィリピンでは日常の足だし、オーストラリアでは近年とくに、難民を想起させることが多い」

段ボールの家は現地の子供たちと共同制作する。「他の人の手によって作られる」ことが重要なのだという。その際に生まれる一時的な共同体のあり方にも彼らは興味を持っているようだ。