ARCHITECTURE
建築家・森俊子が手がける、アフリカの文化センター。
May 13, 2015 | Architecture | a wall newspaper | photo_Iwan Baan text_Mika Yoshida & David G. Imber editor_Akio Mitomi
セネガルの小さな村に完成した茅葺き屋根の建物〈スレッド〉。文化が出会い、触発し合う場です。
首都ダカールからは車で7時間。700人余りの住民が家畜と暮らすセネガル南東部・シンシアンに、文化センター〈スレッド〉が誕生した。粘土を固めた日干しレンガや竹など、地元で手に入る素材でできた建物。屋根もこの地に昔から伝わる茅葺きだ。地の利が悪く物資の乏しい僻地ながら、住民が昔ながらのやり方で自ら施工やメンテナンスができるように、との狙いがある。
〈スレッド〉のデザインを手がけたのは森俊子率いる〈Toshiko Mori Architect〉。発端は2009年、コネチカット州にあるヨゼフ&アンニ・アルバース財団の代表ニコラス・F・ウェバーから協力を持ちかけられた、セネガルでのプランニングだった。パリを拠点とするNGPの医療・教育・農業支援活動に助力してきた同氏は、その後ハーバードの学生たちとセネガルに何度も足を運んだ森さんのプロジェクトの成果から、文化的側面の重要性を認識。2012年、シンシアンに〈スレッド〉をつくってほしいと依頼する。
アルバースを彷彿とさせるデザインの壁は、地球温暖化で年々激化する強烈な太陽や雨を防ぎつつ、風を通す。オープンエリアは市場やワークショップ、歌や踊りで集う場として常時、地域住民に使ってもらう。どう用いるかは彼らの自発性に任せる部分が大。また2部屋設けられた居住空間では世界中から選ばれた芸術家が4〜8週間寝泊まりし、地元と交流しながら制作を行う。ダンサーやラッパー、彫刻家、ビデオグラファーなど滞在するアーティストにはもちろん、村人たちにとっても豊かな発見と刺激をもたらすのが目的だ。
〈スレッド〉のデザインを手がけたのは森俊子率いる〈Toshiko Mori Architect〉。発端は2009年、コネチカット州にあるヨゼフ&アンニ・アルバース財団の代表ニコラス・F・ウェバーから協力を持ちかけられた、セネガルでのプランニングだった。パリを拠点とするNGPの医療・教育・農業支援活動に助力してきた同氏は、その後ハーバードの学生たちとセネガルに何度も足を運んだ森さんのプロジェクトの成果から、文化的側面の重要性を認識。2012年、シンシアンに〈スレッド〉をつくってほしいと依頼する。
アルバースを彷彿とさせるデザインの壁は、地球温暖化で年々激化する強烈な太陽や雨を防ぎつつ、風を通す。オープンエリアは市場やワークショップ、歌や踊りで集う場として常時、地域住民に使ってもらう。どう用いるかは彼らの自発性に任せる部分が大。また2部屋設けられた居住空間では世界中から選ばれた芸術家が4〜8週間寝泊まりし、地元と交流しながら制作を行う。ダンサーやラッパー、彫刻家、ビデオグラファーなど滞在するアーティストにはもちろん、村人たちにとっても豊かな発見と刺激をもたらすのが目的だ。
建物そのものも、伝統的な茅葺きにドイツのエンジニアリングを加えたり、骨組みとなる竹には日本の竹組み技術を凝らしてあるなど、外部の力を少し添えることで地域の特性をより良く生かす。この〈スレッド〉は全米建築家協会NY支部の賞を受賞。2014年ヴェネチアビエンナーレ国際建築展にも招聘された。この仕事に無報酬で取り組む森はこう語る。
「貧しさにもかかわらず、また部族や宗教も異なりながらシンシアンではどの村も幸福で誇り高く、明るい暮らしを営んでいます。ここには物質的な窮乏に置かれた人が備える〝気高さ〟があります。強靱さと資源、そして継承文化に恵まれ可能性にあふれた大陸アフリカ。特に僻地では人間の根幹や大自然とのつながりを実感させられます。そして価値観や、何が真に重要なのかを改めて見つめ直させてくれるのです」
「貧しさにもかかわらず、また部族や宗教も異なりながらシンシアンではどの村も幸福で誇り高く、明るい暮らしを営んでいます。ここには物質的な窮乏に置かれた人が備える〝気高さ〟があります。強靱さと資源、そして継承文化に恵まれ可能性にあふれた大陸アフリカ。特に僻地では人間の根幹や大自然とのつながりを実感させられます。そして価値観や、何が真に重要なのかを改めて見つめ直させてくれるのです」
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