映像になったバワの名建築。ホンマタカシの映像作品が特集上映。

ホンマタカシの映像作品が12月10日から特集上映。最新作で取り組んだ、新しい視点と新しい境地とは。

写真と映画の間のようなことができないかと思っています。――― ホンマタカシ

掃除をする人は建築に触れている。結果的にテクスチュアが伝わります。――― 五十嵐太郎

自然と一体化した建物を数多く設計したスリランカの建築家、ジェフリー・バワ。バワの設計したホテル〈ヘリタンス・アフンガラ〉は、彼の代名詞でもある、海へと続くかのようなインフィニティプールで有名だが、2004年に起きたスマトラ沖地震で津波の被害に遭っている。そのホテルを、被災後10年の節目に訪れて映像に収めたホンマタカシさんと、建築史家の五十嵐太郎さん。建築と映像の濃い談議です。

津波から10年、犠牲者を追悼する式の様子。

五十嵐 撮られたホテル〈ヘリタンス・アフンガラ〉の被害はどれほどだったのでしょう?

ホンマ スリランカでは3万人以上の死者が出ましたが、このホテルでは幸いにも亡くなった方はいませんでした。ホテルに記念碑などがないのは、そのためかもしれません。1階は浸水して建物や塀に被害は出ましたが、元に戻されています。1階の柱に色が付いているのは、津波の後の改修にバワの弟子が携わったためです。

五十嵐 ホンマさんが撮られたホテルは、壁で囲われていない半屋外のロビーが外のプールに延びていて、さらに海へとつながっていますね。そこにベンチがピクチュアレスクに置いてあって。映像で建築は背景となっているけど、自然に溶け込むバワの空間がうまく表現されていました。でも、例えば伝統的な屋根はチラチラとしか見えていませんし、建物自体の説明はほとんどないのが面白い。バワのホテルで映像を撮ったきっかけは何ですか?

ホンマ 最初に2014年のカーサ ブルータスの取材で訪れたときに早朝の光と音がよくて、たまたま短い動画を撮ったんです。建築はたくさん見ていますが、音が気になる建築は少ないなと思って。

五十嵐 話し声がなく、ホウキで掃く音だけがするシーンですね。

ホンマ 一日中、誰かがどこかしら掃除をしているんですよ。

五十嵐 『ハウス・ライフ』という建築の映像作品では、掃除する場面が多く出てきます。レム・コールハースが設計した〈ボルドーの住宅〉の映像なのですが、建築の説明はなく家政婦の動きをずっと追います。基本的に、ずっと掃除で身体を動かしている様子が映される。それが毎日のルーティンワークで、振り付けのようなのですね。これは建築を表現する一つの方法だな、と思いました。

ホンマ 掃除はアフォーダンスの話にも通じていて、建築に対しての動きが1対1なんですよね。あまり意識していなかったけど、掃除を追うことで建築全体が見えてくるというのはあるかもしれない。

五十嵐 建築の人は素材が気になって叩いたり撫でたりするけど、普通の人はしません。掃除をする人はたくさん建築に触っている。結果的にテクスチュアの感覚が伝わると思います。音は空気の振動を通じて、耳に届きますね。それは視覚と違い、離れていても触る感覚を与えます。